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平成28年度北ノ王鉱山学術調査報告会を開催しました

1月21日(土)、生田原消防会館と遠軽町基幹集落センターの2会場で北ノ王鉱山学術調査報告会を開催しました。生田原会場は32名、遠軽会場には36名と多くの方にお越しいただき、2会場とも追加席を作るほどの盛況となりました。この報告会は、昨年12月23日(金)に開催を予定していましたが、大雪により中止を余儀なくされ、約1ヶ月延期して開催したものです。

かつて生田原市街地東側にあった北ノ王鉱山は、大正5年に発見され、昭和12年に帝国産金という会社に買収された後に短期間で大規模な整備が行われました。しかしながら、第2次世界大戦の戦況悪化に伴う国策の転換の影響で昭和18年に閉山となりました。現在も建物のコンクリート基礎などの遺構が山林内にいくつか残っていますが、長年放置され廃墟になっています(一昨年11月に現地確認を行ったときの記事がこちら。)。この鉱山の記憶の継承と遺構の活用を検討するため、本年度から学術的な調査を北海道職業能力開発大学校に委託して進めています。

報告者は、同大学校の駒木定正特任教授。駒木先生は、建築物の歴史を専門とされていて、三笠ジオパークの炭鉱遺構などの調査や北海道文化財保護審議会委員の立場で北海道家庭学校礼拝堂の道指定文化財への指定にも関わられています。今年度の調査では、駒木先生とゼミの学生たちが、現地調査と資料収集に基づいて当時の姿の図面を作成し、更に模型製作を目指して現在も作業が進められています。

▲北海道職業能力開発大学校 駒木定正特任教授

駒木先生の報告の要旨は次(青字部分)のようなものでした。


  • 北ノ王鉱山の第一印象は、市街地に近いということ。鉱山というと多くは生活空間と離れたところに所在することが多いが、ここは生田原駅隣接のホテルノースキングからも一望できる場所にあり、比較的活用しやすい場所に立地している。
  • 北ノ王鉱山の全貌を描いたスケッチから、産出した金をインクラインや架空索道で搬出する運搬システム、事務所などの会社管理システム、そして、住宅や厚生施設などの生活システムの3つが山一つで完結していることが大きな特徴となっている。
  • 帝国産金が鉱山を買収した後、昭和12年から昭和14年までの間に集中的に施設が建設されている。設計には、北海道の建築史にとって重要人物である田上義也と岩見田良夫(当時の北ノ王鉱山建設課長)が関わっていて、どの施設を見てもモダンな意匠が施されたものばかりである。

▲北ノ王会館

  • 現地調査では、学生たちを伴って笹薮に覆われた遺構を調査した。学生たちは都会っ子で、最初はハチが出たなど言って騒ぎ、作業もはかどらなかったが、しだいに円陣を組んだりしてチームワークが充実していった。合宿生活となったが、夕方まで現地で作業、宿舎では夕食前にまず現地調査のメモを清書させ、7時すぎに入浴、夕食という生活を送った。
  • 遺構の中でも今年度対象にしたのは、貯水槽、分析所、大煙突の3つ。現地調査では、遺構の測量を行い、実測データと入手できた写真などを基に図面起こしを行っている。

▲貯水槽跡

▲分析所跡

▲煙突跡

  • 分析所の基礎部分は、土に被われた部分などの状態がわからなかったが、旧生田原村史で航空写真を見つけ、そこから建物の形状のヒントを得ることができた。なお、この航空写真は昭和23年に進駐軍が日本全国をくまなく撮影したものの一部。また、室内を撮影した一枚の写真と外観の窓の形状が突合することから分析所の写真であることがわかり、分析所内の状況を把握することができた。
  • 最近になって、札幌市に現存する岩見田設計事務所と先述の岩見田良夫氏は何か関係があるのでは?と思い、同事務所にいた卒業生を通じて確認したところ、同事務所の創設者であることが判明した。現会長からの聞き取りで岩見田氏に関する多くの情報が得られ、当時の建設記録と書かれた写真帳の発見につながった。この写真帳は、これまでわからなかった情報を多く含む貴重な新資料となった。これが、先週のことなので、日程の延期がなければ、このことは報告できなかった。

駒木先生の報告の後には、生田原地域で現在、金鉱脈を調査しているサウザン・アーク・ミネラル・ジャパン社の大賀さんから調査の内容についての報告やジオパークとの連携の可能性などについての発表もいただきました。

▲サウザン・アーク・ミネラル・ジャパン社 大賀光太郎氏

遠軽会場の質疑応答では、「鉱山跡を活用するには、どのような方法が考えられるか?」との質問が出ました。これに対し、駒木先生は「市街地から近い立地条件」「田上義也と岩見田良夫という北海道の建築史にとって重要な人物が関わっている」ことから「十分に価値の高い場所だと思う。」と回答されました。

今回の報告は、今年度の中間報告であり、最終的な報告書は後日まとめられます。次年度以降については、北ノ王鉱山遺構の中でも最も規模が大きい精錬所の実測調査などが未着手の状態なので、引き続き調査を行い、この歴史遺産の保全に取り組んでいくこととしています。また、「どう活用していくか」という議論も地域の中で更に盛り上がってほしいと思います。

当日配布資料はこちらでダウンロードできます

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