ジオストーリー

黒曜石がつむぐ地球と人の物語

火山が生み出した天然のガラス「黒曜石」

真っ黒で独特の光沢を持つ黒曜石と呼ばれる岩石があります。

割ってみるとその割れ口は鋭く、今にも手を切ってしまいそうです。

薄くはがれた黒曜石のかけらを太陽にかざしてみると、向こう側が透けて見えることがわかります。

この黒曜石は、火山活動によって誕生した岩石です。

粘り気が大きいマグマが冷え固まってできた岩石ですが、他の岩石と大きく異なるのは、

そのほとんどがガラスからできているという点です。

ここ北海道遠軽町白滝地域には、日本で最大規模とされる黒曜石産地が位置しています。

なぜ、この場所でたくさんの黒曜石が誕生したのでしょうか?

なぜ、この場所で火山の噴火が起きたのでしょうか?

なぜ、火山活動によってガラスがつくられるのでしょうか?

その謎をひもといていくと、北海道や日本列島の成り立ちなど、過去の地球の活動を知る手がかりへとつながっていきます。

黒曜石という美しい岩石から、過去の地球の活動を知ることができる場所、それが白滝ジオパークです。

2万年前の人々が求めた黒曜石

撮影:佐藤雅彦氏

過去の人々が暮らした跡が残されている場所を「遺跡」といいます。

遠軽町白滝地域では、2万年前頃を中心とした遺跡が100か所以上発見されています。

そして、これらの遺跡のほとんどが、黒曜石がある山のふもとに残されています。

割っただけで鋭い刃物となる黒曜石は、石器の材料として世界中で好まれました。

白滝地域の遺跡の発掘調査からも、山の中で入手した黒曜石の塊から、大量の石器を作りだしていた様子が明らかにされています。

さらに科学的な分析により、白滝の黒曜石で作られた石器が、北はサハリンから

南は新潟県や山形県にまでわたっていたことがわかりました。

2万年前の人々は、なぜこれほどまでに黒曜石を求めたのでしょうか?

なぜ、遠く離れた場所へ向かう必要があったのでしょうか?

その背景には、現在の私たちも直面している地球の気候変動が関わっていました。

白滝ジオパークでは、変動する地球の環境を生き抜き、現在の私たちまで命を紡いできた

過去の人々の暮らしも学ぶことができます。